裸の香り

2004年6月18日 色と形
 最近、香りの体験をしていない。日常生活に匂いはつきものだ。良いにおいから、いやなにおいまで、私たちは何らかの匂いを嗅ぎつづけている。しかし、私を刺激する匂いに、最近出合っていない。BGMのように日常のなかに溶け込んでしまっているのだ。私がくたびれて感覚が鈍くなっているからかもしてない。
 日常での匂いといえば、体臭であろう。ここでいう体臭とは香水やコロンも含めたものである。純粋な体臭とは裸のようなもので、日常のなかでは、限られたプライベートの空間でしか、体験することはない。ちなみに私は、妻の腋の匂いを嗅ぐのが好きだが、彼女が嫌がるのでなかなか嗅げないでいる。香水やコロンを含めた香りは、服を着た体臭と呼ぶことができる。服が似合ってる人もいれば、服のセンスの悪い人もいるように、体臭にも同じことがいえる。
 昨晩、帰宅途中に電車で、40過ぎぐらいの女性の隣に立っていた。彼女はTシャツに麻のズボンとかなりラフな格好をしており、仕事帰りにも見えず、私も含め、くたびれた輩で混んでいる電車の中で、さっぱりとしており地味ながらも異彩を放っていた。彼女の香りは、石鹸や香水など人工的な香りは一切なく、かといって汗を含めた動物的体臭もなく、純粋に女性の香りだけでなされていた。その香りは、少し草の香りにも近く、しいて言えば中国茶の白毫銀針に似ている。優しく包み込むようなやわらかな香りである。私は、昨日の夜、裸の香りの女性に出会ったのである。 

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