スモーク

　かって私は煙草吸いであった。朝起きて一本、通勤の途中で一本、仕事場について一本、昼ごはんの後はもちろん一本と、私の一本は就寝前の一本まで延々と続いていた。ひどいときには、夜中に起きだし、吸っていた。私の好きな喫煙場所はベランダだった。とくに、この季節の夜は、ベランダで煙草を楽しむにはうってつけである。暑く寝付けない夜に、風の通るベランダで煙草を咥えながら独りゆっくりと思索にふけたものである。
　煙草の映画といえば、その名もずばりスモーク、タバコ屋を舞台とした映画である。ピアノレッスンで一世を風靡したハーヴェイ・カイテルがタバコ屋の主人を演じ、寡作の作家ポール・オースター原作であることでも、話題となった。しかし、煙草をみんなが吸っているかというとそうでもなく、思ったより健康的である。煙草を吸いまくっている映画といえば、香港や台湾のアジアの映画である。何かあれば煙草に火をつけぷは〜と煙を吐き出す。吸っているシーンがあまりにも多いと、喫煙が演出の小道具ではなく、この俳優たちは映画を撮っているあいだも煙草をやめることのできないほどのヤニ中毒者なのかと思ってしまう。