私の青春時代だから、もう二十年前の話である。東京の大学に入学し、はるばる地方から出てきたばかりのことである。東京のこともよくわからず、大学と下宿を往復する日々であった。ある日、クラスの子から、新入生を対象としたダンスパーティーに誘われた。確か、六本木のディスコが会場だった。おしゃれな服を持ちあわせてなかった私は、なんの変哲もないオリーブ色のチノパンに赤の格子のボタンダウンで、髪の毛は後ろに自然に流し、真ん中で分けていた、いわゆる俊ちゃん風である。ズボンはよれよれで膝が出かかっており、シャツには洗っても取れない染みがいくつか付いていたが、できるかぎりのおしゃれである。パーティーでは緊張しっぱなしであり、どんな曲がかかっていたかも、何を飲んだかも憶えていない。パーティーが終わりになるにつれ、フロアーはまばらになってきた。確かその少し前にチークタイムがあり、女の子と親密に話せるような企画があったのだと思う。そして気の合った者同士から二次会へ抜けていったのだ。僕も何人かの女の子と踊り、ぎごちない会話をしたように思う。そして、次の記憶では女の子二人組と一緒に地下鉄に乗って家路に向かっていた。今の自分なら、お茶でもしていこうかと、気軽に声を掛けられるが、当時の僕にはそんな考えは思い浮かばず、途中の駅でバイバイと別れてしまった。電話番号を聞くこともできずに、唯一聞けたのは大学の名前だけだった。それは、ある私鉄沿線にあるこじんまりとしたミッション系の女子大であった。彼女たちも少しは期待していたに違いない、それなのに相手の男は自分の帰りの地下鉄の乗り換えを教えてもらってバイバイである。
もちろん、彼女たちとの話に続きはなく、その女子大との接点もその後の私の人生では全くない。それなのに、その名前は、僕のなかでは少し意味を持っている。甘酸っぱい思い出の名前であり、当時その女子大があった駅を電車で通過しただけで、未だに胸がキュンとしてしまう。
もちろん、彼女たちとの話に続きはなく、その女子大との接点もその後の私の人生では全くない。それなのに、その名前は、僕のなかでは少し意味を持っている。甘酸っぱい思い出の名前であり、当時その女子大があった駅を電車で通過しただけで、未だに胸がキュンとしてしまう。
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