津波

2005年1月7日
 私は科学者であり、わからないことを探求することを仕事としている。新聞上には、世界中の科学者による努力の結晶が華々しく紹介されている。宇宙を構成する物質、太古の地球に住んでいた生物たちの姿、不治の病の発症機序などなど。南極や深海など人が近づくことが困難な極域は、格好の研究対象となる。そこには人が見たこともない生物や不思議な物理化学現象が、人との出会いを待って眠っている。宇宙も然り、そこには解明されていない謎が多く残っている。この探求の過程において重要なのは、何がわかって何がわからないのかという見極めである。解明した謎が全体像の中でどのように位置づけされているかを知って、初めてその解明の価値が評価される。よってマスコミにも、どのように興味深いのかという探究心を持って記事にして欲しい、そこには好奇心と批判性が必要であり、科学者の発表を鵜呑みにしてはいけないのである。
 さて、そこで本題である。今回のアジアにおける津波に関して、国内の関連する研究機関は争って解析を進め情報を公開している。しかし、中にはうん?と唸りたくなる記事もある。その最たるがシュミレーションのお話である。シュミレーションの重要性は結果ではなく、過程であって、どのような要因を織り交ぜるとうまくシュミレーションできたかである。地震発生何時間後に、どこに何メートルの津波が来たのかがわかることは、シュミレーションの成果ではなく、すでにわかっている観察結果なのだ。重要なのは、こんな地形をしてたからここでは大きな津波が来たとか、このシュミレーションを使えば津波の予測をどれぐらいの時間と正確さで可能か、などである。こんなところでぼやいても、どうしようもないのだが、正月から文句を垂れたくなったのである。

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