先日、この映画の主人公、奥崎謙三が死んだ
 自分が理解できないものに出会うと、それを断固拒否する人と、それに興味を示し、どうして理解できないのかをわかろうとする人がいる。人々が理解できない対象として、この奥崎謙三ほどうってつけのものはない。現在のドンキ・ホーテなのである。その支離滅裂な思想、型破りな行動、何をとっても簡単には理解できない。彼の人生にそって考えれば理解できるのではと期待し、彼の生い立ち、戦争体験、終戦後の生活に関する情報を集めた。そうすると、どうして彼が反天皇思想に傾いたのかを理解することができるが、やはり、彼の型破りな行動を説明するのには十分ではなく、狂っているという印象をぬぐうことはできない。
 私は神戸出身者であり、この狂人になんどか接する機会があった。選挙のたびに立候補し、汚い字でスローガンが書かれた車に乗り、叫び続けていた。洗練されたという言葉に一番遠いものを見た気持ちである。普段なら、一瞥をくらわし、無視すればいいのだが、彼の場合はそうはいかない。それほど印象が強いのである。彼のその強烈な印象すべてが計算されたものであり、目的のためへの確信犯であるという話がある。彼は狂人であることを演じきったのか、それとも歴史が生み落とした狂人か、それはもうわからない。ただ、彼が、自分の理解できないものに出会うとそれに断固拒否する人であったことは確かであろう。

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