このぶっ飛んだ美術館の魅力を知ってもらうためには参道の話をもう少ししなくてはいけない。それは日本でもどこでもない、知らない空間に導いてくれる道なのだ。そう、この美術館は自らを桃源郷と謳っていて、創造者によって夢想された空間なのだ。レセプション棟を出てトンネルに差し掛かるまでの沿道には苔むした林が続いている。おい、見ろよこんな乾いた青い空の下に、瑞々しいコケが生えてるぜ、この組み合わせはいいね、この世のものとは思えねえぜ。トンネルの中は、間接照明でやわらかく照らし出されていて、いっときの安息を僕らに与えてくる。でも、油断してはいけない、そう、トンネルを出ると、ガラス張りの社が人工的な輝きに満ちて目に飛び込んでくる。その前に植えられた二本の赤松も、見事なプロポーションを見せつけ、自然と言うにはあまりにもでき過ぎなのだ。それなのに聴こえるのは風の音だけ、街の音なんてこれっぽっちも聴こえてこない。なんだ、こりゃあ!、仙人じゃなくて、無口なC-3POが出てきそうだぜ!実際に出てきたのは、アルカイックスマイルを絶やさない受付嬢ときた。おいおい、俺たちどこへ迷い込んじゃったんだ!
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