1Q84 BOOK 2
2009年10月16日 読書
光の届かない深い海に、タンクを背負ってひとりぽつんと潜っていた時期がある。
水面に浮きながら、水中を覗くと、一本のロープが浮きから垂れている。ロープには貝やホヤなど様々な動物が付いており、彼らは音も動きもないが糞を絶えず吐き出し続けている。その糞が波に揺られながらも、ゆっくりと沈降していく様が水中メガネ越しに見られ、自分もその沈む先へこれから向かうのだ。肺に貯まった空気を二三回に分け、大きく吐き出すと、中性浮力が崩れ、体が自然に降りてゆく。左手をロープに添え、右手でもった水深計を見ながら、ゆっくりゆっくりと降りてゆく。水深とともに沈む速度が加速されるため、今度は肺に空気をため始める。二十メートルの水深までなら、BCに頼らなくとも、肺の調整だけで自然な浮沈を繰り返すことができるのだ。十メートルを過ぎると視界がほとんどなく、海底は突然現れる。のめり込むように浮泥の上に着地すると、そこには暗く、静かで、冷たい世界が待っている。通い慣れた場所であり、また、しなければいけない作業が待っているため、迷うことは決してないが、非日常の世界であることに違いなかった。1Q84と違うのは、僕は戻ってこれて、今も生きているということである。そう、僕のダイビングの先生が教えてくれたことは、たとえどんなことがあっても自力で必ず帰ってこないといけない、海底では独りかもしれないが、この世では独りではないのだから。
水面に浮きながら、水中を覗くと、一本のロープが浮きから垂れている。ロープには貝やホヤなど様々な動物が付いており、彼らは音も動きもないが糞を絶えず吐き出し続けている。その糞が波に揺られながらも、ゆっくりと沈降していく様が水中メガネ越しに見られ、自分もその沈む先へこれから向かうのだ。肺に貯まった空気を二三回に分け、大きく吐き出すと、中性浮力が崩れ、体が自然に降りてゆく。左手をロープに添え、右手でもった水深計を見ながら、ゆっくりゆっくりと降りてゆく。水深とともに沈む速度が加速されるため、今度は肺に空気をため始める。二十メートルの水深までなら、BCに頼らなくとも、肺の調整だけで自然な浮沈を繰り返すことができるのだ。十メートルを過ぎると視界がほとんどなく、海底は突然現れる。のめり込むように浮泥の上に着地すると、そこには暗く、静かで、冷たい世界が待っている。通い慣れた場所であり、また、しなければいけない作業が待っているため、迷うことは決してないが、非日常の世界であることに違いなかった。1Q84と違うのは、僕は戻ってこれて、今も生きているということである。そう、僕のダイビングの先生が教えてくれたことは、たとえどんなことがあっても自力で必ず帰ってこないといけない、海底では独りかもしれないが、この世では独りではないのだから。
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