土の記
美藤さんオススメの小説「土の記」を読む
前に読んだ警察ものやスパイものの高村薫とは全然違う高村薫を楽しむ。私は関西出身で、さらに叔母が奈良に住んでいることもあり、舞台となった地方の地理や地域性をある程度知っていたが、これはそんな予備知識を持たずに彼女のマジック・リアリズムの世界に浸るのがオススメ


土に生きる人たちが主人公の小説は昔からあり、古いところでは、パールバックの「大地」、スタインベックの「怒りの葡萄」、長塚節の「土」などが思いつく
話のパターンは、土地なしの小作農が、なんとか頑張って大地にしがみつきながら、あるいは流浪の民となりながら、生きてゆく苦労物
彼ら農民は、自分たちの歴史を振り返る余裕などなく、嵐が来ようが、作物が枯れようが、生き残らねばならず、必要とされるのはしぶとさだった

でも、この小説の主人公にしぶとさはない

この100年で農業は大きく変わり、品種改良が進み、土地改良がなされ、農作物はそんな簡単に枯れなくなり、工業製品のように計画して作れるようになる。そして、農作物も工業製品と同じく量より質が求められる時代となる。作業に手間がかかることに変わりはないが、マニュアル化がどんどん進んでおり、農家は気象も含めた様々な情報を正確に読み取り、柔軟に行動する必要がある

かつての農民にはしぶとさが求められていたが、今ではしなやかさが求められるということか

コメント

美藤
2018年10月5日23:55

東京から婿に来て、40年暮らしてもよそ者と見られる奈良という土地。
地図をちょっと覗くだけで古代史セレブの墓がごろごろ見つかる土地の歴史を重苦しいなぁと思ったのですが、千年の歴史なんて大地の表層。
人の営みも歴史ごと容赦なくあっけなく崩れて形を変える土の時間に畏れのような気持を抱きました。人にとってはカタストロフィですが、大地にとっては末端の筋肉をピクリと震わせた程度のことか、と。
こんなに圧倒的な自然災害の多い土地で生きてきた日本人には「無常」というのは無意識に馴染んだ感覚かも、などととりとめなく考えたりします。

はち
2018年10月6日1:35

読み終えたばかりで、まだまだ頭の中で整理できてないけど
取り敢えず、読後感を日記に書いてみました
半年後にもう一度読み返してみたい一冊、その時は無常についても、もう少しうまく書けるかも

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