土の記

2018年10月6日 日常
土の記
昨日の話の続きになるが、
この小説、入り婿で退職後に田畑を始めた主人公の農作業について多くのページが割かれている。そのほとんどはマニュアルと専門用語中心の高村薫らしい精緻な記述である。また並行して、事故で亡くなるまで本家の長女として田畑を守ってきた妻についての主人公の夢想が続く

主人公の農作業は亡くなった妻の追体験であり、自分を残して逝った彼女を理解しようとするためであるが、マニュアル通りにすれば素人でもある程度は作ることのできる米作りとは違って、人の心を理解することは雲をつかむように上手くいかない。

夢想は、豊穣を象徴する女系の神話として展開する。その展開の様が見事で読み終わった後のすっきり感が気持ち良い。
もちろん、代々神話を守るため土地に縛られることを全肯定しているわけでなく、主人公の娘と孫のように国境を越えるミューズも登場する
ネタバレでごめんなさいだけど、ミステリーではないので、内容を知っていても読むのは楽しいはず


農業が発生して以来、世の中は母ちゃんを中心に回っていて、父ちゃんは知識を使ってウンチクを語ることはできるが、メスにくっついている矮小化した小指サイズのオスのチョウチンアンコウのように、タネを畑に蒔くぐらいしか能がないということか

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