エコー・メイカー
リチャード・パワーズの2006年の作品

物語の素材は実に凡庸である
・貴重な渡り鳥の中継地である湿地の開発
・新自由主義
・グレート・プレーンズの農業や開発に伴う水不足
・競争に疲れたアメリカ人
・タコツボ化し過ぎた神経科学への批判
・ネットを通して流布される陰謀論
・自然の素晴らしさ

上の素材がごちゃ混ぜに展開されながら、さらに誰が主人公なのかもよくわからないまま、物語は冗長に進む。もちろん出口はなかなか見せてくれない
そして、最後の最後、本当に最後のわずかで、話は急展開、現代のアメリカで自我を失わないためにはという凡庸なテーマについて光を見せてくれる

凡庸で、冗長でありながら、読んでて楽しいのは、これらの凡庸で冗長な問題から読者も逃れることはできず、登場人物の振る舞いに私たちのミラーニューロンが発火し、共感を得るからであるとの解説らしきものが作中にあり、構造的に再帰性の読書体験が楽しめる

あとがきにもある通り、トマス・ピンチョンとドン・デリーロ、フィリップ・ロスの後継者一番手か!?
2018年の新作、The Overstoryの訳本が10月に出るらしい、アメリカでの評判は良く、こちらも楽しみ

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